準抗告の申立てをしました
麹町警察署武村悦夫警部補らによる常野さんへの家宅捜索に対し、弁護士を通じて6月22日に準抗告の申立てをしました。プライバシーに関わる情報など、インターネットで公開すべきでない部分もあるため、申立書をそのまま掲載することはしませんが、趣旨としては、
・差押処分を取り消すこと
・押収した物件を直ちに返還すること
を求めるものです。
理由として、今回の差押えの違憲・違法性を詳細に挙げています。以下、申立書を部分的に引用します。
1.令状主義の趣旨の確認
憲法35条が採用している令状主義の趣旨は、捜査機関による無差別の捜索・押収を司法が防止することにある。すなわち、いわゆる一般的探索的令状の禁止である。そして憲法35条は、この一般的探索的令状禁止を具体化するために、「正当な理由」に基づいて発せられた「各別」の令状を要求している。そして、捜査機関による差押えは、「犯罪の捜査について必要があるとき」(刑事訴訟法218条1項)に限って、「証拠物または没収すべき物と思料するもの」(同222条1項、99条1項)についてのみ行うことが許されている。すなわち、差押が適法となるためには、特定の犯罪事実について嫌疑が存在することを前提としたうえで、当該犯罪事実の存否などを証明する手段となり得るものという意味において差押の対象物が犯罪事実との関連性を有していなければならない。
そうであるから、捜索差押許可状に基づく差押の執行にあたっては、この関連性の有無を確認するため、差押対象物の内容の確認をすることが必要である。
また、被疑事実との関連性を有する物であったとしても、被疑者の不利益について十分な考慮が払われなければならない。すなわち、たとえ差押物が証拠物または没収すべきものと思料される場合であっても、犯罪の態様、軽重、差押物の証拠としての価値、重要性、差押物が隠滅毀損されるおそれの有無、差押によって受ける被差押者の不利益の程度その他諸般の事情に照らし明らかに差押の必要がないと認められるときにまで、差押えを是認しなければならない理由はない(最高裁第三小法廷決定昭和44年3月18日
刑集23巻3号153頁)
2.明らかに差押えの必要がないにもかかわらず行われている
・パソコンや携帯電話の差押えの際に、記録された内容を確認したうえで、被疑事実との関連性の有無を判断すべきであるはずが、「パスワードを教えてくれた場合でもすべて押収していく。返還するのが早くなるだけだ」との警察の発言にある通り、被疑事実との関連性を確認することなく差押えをすることを前提とした返答をしている。
・学生証や保険証など、生活に不可欠なものを押収して行くのは被疑者にとって不利益が大きすぎる。
・また、ほかにも被疑事実との関連が全くない私物を押収しており、被疑者の思想信条を一般的包括的に把握しようとしている。
以上のことから、
本件押収は、刑事訴訟法218条1項の「必要」もないままに、同222条1項が準用する99条1項の「証拠物」に該当しない物件を差押えたものに他ならず、憲法35条1項が住居等の不可侵を保障するために要求している「正当な理由」に基づいた処分であると言うことはできない。(中略)
したがって、本件差押処分は明らかに違憲違法である。
きわめて部分的な紹介ですが、この申立を通じて、今回の警察による家宅捜索が違法な活動であることを裁判所に示しています。
通常、勾留決定を不服として勾留取り消しを求める準抗告では、その日の内に裁判所で審理され、なんらかの決定がなされます。しかし今回は、人が勾留されたのでなく物品が押収されたという状況のちがいからなのか、今日に至るまで裁判所からはなんの返答もなく、放置されています。しかし、警察の方ではこの申し立てに呼応したと見られる動きがありました。これについては次のエントリにて紹介します。